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An image塩のまめ知識

日本の塩の歴史(2) イオン交換膜製塩法・流下式塩田法

日本の塩の歴史を分けて紹介している第3回目。今回は、「イオン交換膜製塩法」についてお話しします。

短期間だけ行われた製塩方法「流下式塩田法」

現在行われている製塩方法は、昭和47年から全面的に取り入れられた、イオン交換膜製塩法なのですが、じつは、イオン交換膜製塩法が主流になる前に、十数年の間だけ行われた製塩方法があります。 製塩の歴史の中ではほんの短い期間でしたが、「流下式塩田法」という方法です。

この「流下式塩田法」は、「流下盤(リュウカバン)」と「枝条架(シジョウカ)」の組み合わせで、海水を濃縮します。 「流下盤」とは、粘土で出来たゆるい傾斜の地盤です。「枝条架」は、竹の小枝を組み合わせた、竹ぼうきを幾つも並べたような、高さ7~8メートルの装置。

モーターで吸い上げた海水が、なだらかな坂をゆっくり流れていく間に、水分が蒸発します。 そして枝条架の上から、流下盤で濃縮した海水をしずくのように落とすことで、さらに濃縮を進めるのです。 その濃縮した海水を煮詰めるのは、前回お話しした揚浜式や入浜式といった塩田での製塩方法と同じですが、これらと違い水のくみ上げを機械で行うため、労働力を1/10におさえることができるようになったのです。

けれども、この方法も屋外での施設のため、結局天候に左右されてしまうのは同様でした。 このため、新しい製塩方法「イオン交換膜製塩法」が開発されると、当時7社あった製塩メーカーは一斉に切り替え、昭和47年には、流下式製塩法は完全に姿を消してしまいました。

日本が生んだ合理的な製塩方法

実はこの「イオン交換膜製塩法」を行ったのは、意外にもなんと日本が初めてでした。 また、現在でもこの方法を用いた製塩方法は、日本と韓国くらいだそうです。 天候に左右されず、24時間製塩していられるため安く、また、安定的に純度の高い塩が作れるので、非常に合理的な製法と言えます。塩の歴史から見れば、個性とかストーリー性には欠けているような気もしますが・・・。

塩専売がなくなった平成9年以降は、さまざまな会社から、独自の濃縮法や煮詰め方により個性のある塩がたくさん発売されています。また、海外のユニークな塩も簡単に手に入るようになりました。 90年以上続いた塩専売の反動とも言えないこともありませんが、選ぶ楽しさを味わえるようになりました。自分の目で(舌で)たしかめて、個性豊かなソルトライフをお送り下さい。 当サイトでは塩の評価を行っていますので、皆さんが使用された塩のご感想をお待ちしています。

さて、製塩メーカーすべてが一斉に切り替えてしまった「イオン交換膜製塩法」とは、どんな塩づくりなのでしょうか? この方法は、これまでのように海水から「水分を蒸発」させて塩を取るのではありません。

説明が少し難しいのですが、簡単に言うと「塩を特別にすくいあげることのできる膜」を使い、海水から「塩の成分だけを取り出す」方法です。 この膜が「イオン交換膜」です。

海水中の塩は、「塩素イオン」と「ナトリウムイオン」という電気を帯びた粒になっています。イオンには、プラスかマイナスの性質があり、プラスであればマイナスの電気に、マイナスであればプラスの電気に引きよせられます。

塩素イオンはマイナス、ナトリウムイオンはプラスの性質があるので、海水に電気を流すと、ナトリウムイオンはマイナス極へ、塩素イオンはプラス極へ移動します。この性質を利用したのが「イオン交換膜製塩法」です。

大きな容器の中に海水を入れ、プラスイオンしか通さない膜とマイナスイオンしか通さない膜を交互に置きます。 ここに電気を流すと、塩素イオンとナトリウムイオンは、それぞれが逆の方向に移動し、膜に止められます。すると図のように、膜と膜との間に濃い塩水ができる層と、薄い塩水の層とに分かれるのです。 これで濃い塩水がとれます。 この海水を、従来の平釜より効率のよい真空蒸発釜で煮詰めて作られるのが、食塩です。